2009年05月26日 01:42

『救われたい魂のさけび』2

「なんだよ。みんな結構くだらないことで死んでるよなぁ」

全員が語り終えると、カインは口を開き下品に笑った。

「ま、事故とかで突然死ぬよりいいか。なぁ、こう思わねぇ?
オレ達は自分で死の時期をコントロールしたんだ!って」

まだクスリの効果が残っているかのようにカインは虚ろな目でみなを見渡した。

声が問う。 

『…あなた方を自殺に追い込んだのものは何でしょうか?』

その問いかけにみな目を見開いた。


「「「「「「腐った世の中だ!!!!!!」」」」」」


叫びに反応するように、中心にあった光が徐々に力をなくしてゆく。
彼らの姿は再び闇の中に埋もれた。

『今はなきあなたたちの未来を見てみますか?』

静まりかえった闇の中、声が響いた。

『もしあなたたちがこの場所に来ることなく、自分の与えられた人生を楽しむことができていたら…』

その声と共に、みなの意識へ映像が流れこんでいく。

それは夢を叶えたり、愛する者を手に入れたり、愛されたり…。
 
みんなが本当は望んでいた未来の姿がそこにはあった。


「…自殺しなかったらこんな未来が待っていたっていうの?」
「嘘だ!そんなわけがない!」

みな口々に叫びだす。

『これはあなたたちが掴むはずのチャンスでした』

「チャンス?」

『今見たことが必ずしも叶うわけではない。けれど叶えることができるチャンスは、誰の上にも平等にあったのです』

「死んだらすべてが終わりだわ」

少女たちが寄り添いながらつぶやいた。
再び静寂が訪れる。

『あなたがたは…死んで楽になったのですか?』

声は問うばかり。

『次はこれです』
次に声が見せたのは、残された者の悲しみだった。

家族、友人、恋人、知人、同僚、ニュースを見て自殺を知り、心を痛める人々。

たくさんの人の悲しみがみんなを襲った。

それは地上にいる数えきれないほどの人間が抱えている、消えない痛みだった。


他人に子供の命を奪われた親。

銃殺。
事故死。
戦死。
病死。

そして自己死である自殺。

世界の自殺者数は年間100人。

アメリカでは18分に1人が自ら死を選んでいる。。。


「…じゃぁ月曜日にねって。それが最期だったから…毎週月曜日は家であの人を待っているの」

「銃で、頭を撃ったんだ」

「あの人は飛び降りたよ」

「手首を切った」

「もしあいつが生きていたら…俺の人生は変わってた」

「17歳だったの」


「生きて……ここに居てくれたら…」

生きていさえいれば!!

『…今も世界中で、自ら命を絶とうとしている「誰か」が大勢います』

闇の中に一人の人間の姿が浮かんだ。

どこかの国の、20代前半の男だ。彼は何かに向かって叫んでいた。

声は聞こえないが必死の形相で何かを訴えているようだった。その手には猟銃がある。

それが誰かに向けられ、また降ろされ、また狙いをつけようと動いた。

『人間には選択権があります。選ぶのは他の誰でもない。自分なのです。しかしこの彼の中には2つの選択肢しかない。彼は迷っている。人を殺すか自分が死ぬか』

男は猟銃で狙いをつけた。
口をぱっかりと開けた自分に。

「やめて!!」

少女達が叫んだ。

それと同時に見えていた映像が切り替わる。次に光の中に写ったのはどこかのビルの屋上で佇む女。

空の一歩手前の足場でたちすくんでいる。一歩踏み出すだけでまっさかさまだろう。

女は静かに目を閉じ、身を乗り出した。


そしてまた映像が切り替わる。
次は自分の腕にナイフを当てている少年。

その次は線路に飛び出そうとしている中年の女性。

次は自分の首に縄をかけている男性。

次は…

「いやぁぁぁぁ!!」

「やめて!死なないで!」

光に向かって少女は手を伸ばした。

しかし実体をもたないその手では光を遮ることはできない。

それは各々の罪のすべてを照らすかのように強く光っていた。

自己流子育て哲学