2009年05月26日 01:44
『救われたい魂のさけび』3
『あなたたちは自分が苦しみから逃れたいがために自ら死を選び、周りの人達を、そして自分の未来を不幸にしたのです』
『それがあなたたちの罪。苦しみはいつか解放される。それを信じなかったあなたたちは償わなければなりません』
「どうやって!?」
「私たち地獄行きってこと!?」
『魂の墓場でしばし眠りにつくのです。そうすれば長い時の中であなたたちの罪は癒され、再び地上へと生まれ変わることができるでしょう』
『そして願わくば…次の人生で同じ罪を犯さぬように生きるのです』
6人は黙ったまま何度もうなずいた。
『さぁ行きなさい。遠い遠い未来へ。』
そしてすべての光は消え失せた。
◆
再び訪れた闇の中、声が響く。
『クリス、キミはここに来てから何百、何千何万の人間の魂を見てきましたね』
その声に導かれるように、先ほどまで自殺者たちを照らしていた光が弱よわしい熱を帯び出現した。
光の中に浮かび上がるのは一つの魂だ。
『それで?答えは見つかりましたか?』
「…いいや」
クリスは静かな声で言った。
その口調には落胆の色がある。
「わかったのは人間の罪ばかりだ。破壊欲望憎悪。そして涙」
『笑顔もあったでしょう?苦しみから解放されて死を喜んでいる少女もいました』
「でままだ人間を好きにはなれない。だからまだ自分の存在も認められない。だから…まだここからは動けないよ」
クリスは闇の中の何かを見つめた。
「人は失ってから気付くんだ。いつでも。今も昔もこの先も」
そこにあるのは現在であり、過去であり、未来。
『クリス、永遠というのはどこにも属したりはしないのです』
言う声が揺らいだ。
『ああ、ほら…私にもその時が来たようです』
『今度はキミが私に代わって彼らの魂を導いてくれると願っています。キミ自身が自分の答えを見つけるまで』
声は徐々に音をなくしてゆく。
『でも最期にこれだけは言わせてください。たくさんの人間が、人間として生まれたこと、自分の存在がどれほどこの宇宙に歓迎されていたのか、そのことに誰一人何の価値も見出してはいませんでした。それでも、私はそんな人間が大好きでしたよ』
声は闇の中へと溶けこんでゆく。
「それはさ…ボクのことも好きでいてくれたってことだよね」
闇からの返答はなかった。
変わりにやってきたのは、姿なきうつろな魂たち。
クリスは自分の存在が闇に溶け込んでゆくのを感じた。
その闇の中、意識を開く。
「…お客さんだ。じゃぁボクは…答えを見つけるよ。しばらくはここで」
永遠なき場所で、何度も回忌しながら。
クリスは一人、闇の中へと手を伸ばした。
もうすぐ次の客がやってくる。
[ようこそ、罪深き魂たち…]
…ここは、死と、闇の世界。
救われたい魂の、叫ぶ場所。
FIN
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