2009年05月05日 01:19

『ギフト~ささやかな贈り物~』

 私はずっとあなたを見つめていた。

 それなのにあなたは気付かない。

 私の気持ちなんかには・・・。

 そして私の願望は、見つめるだけには留まらず加速してゆくばかり。

 あなたに・・・触れてみたい。

 そう、それだけの願いだったのに

 どうしてこんな事になってしまったんだろう。

 真っ赤な血の海の中で、私はゆっくりと目を閉じた。

「ご飯できたよー浩介―。」

 彼の大切な彼女。私は二人の邪魔をする。

 気付かれないように背後から。

 ・・・これぐらいはいいよね?

 二人に見つからないように、そっと。近づく彼の温度。

 ずっと触れたかったあなた。

 私はそっと、彼の肌に触れた。

 その瞬間、言いようのない幸福感が体を包み込む。

 待っていた喜び・・・。

 しかし

 バンッ!


 突如、耳が張り裂けそうなほどの爆音が轟いた。
 全身が震えて私の体は動かなくなった。


「浩介!血が!」

「いや・・・平気。」

 遠くなる意識の中で、二人の声が微かに聞こえてくる。

 彼女がすごい形相でこちらを睨みつけている。

 私はこのまま死ぬんだ。そう思ったら泣けてきた。

 でも、これでいい。所詮私の命は長くはなかったのだ。

 だけどせめて・・・と最期の力を振り絞り、私は彼の腕にしがみつく。

 せめてあなたにだけは、私がこの世にいた事を覚えていてほしいから。

 これが私の最期のプレゼント。

「・・・平気だけどちょっと遅かったな。こいつ俺の血吸った後だぜ。」

「もう蚊の季節なのねー。」

「・・・うわっ!かゆっ!!」     

Biomedical(バイオメディカル)